鳥類的雑記帳

色々と思っている事を書き連ねていくつもりです。

舞台「クジラの子らは砂上に歌う」感想

 2016年4月、「クジラの子らは砂上に歌う」の舞台公演が開催!

 本屋で原作の表紙に一目惚れし、即座にまとめ買いして大ハマリした筆者的に、これは外せないイベントとなりました。

 AiiA Tokyo Theaterにわざわざ長野くんだりから、特急電車に揺られて行ってまいりました。

  会場があんまりよろしくない場所と聞いてたんですけど、私はなにぶん舞台なんぞ素人もいいところ。特に文句なく、こんな所なのかーと軽い気持ちで入場しました。むしろ渋谷の人の多さのが辛かったよ。

 

 が、問題だったのは客層の男女比率……!

 周りは9割、は言い過ぎでも7割は女性……! レーベル的に当たり前……! 長野から1人でやってきた男オタクとしてはもうこの時点で死にたい……! でかい体ですまん……!

 開演までひたすら縮こまってました。縮こまりながら買っておいたパンフレットを見ながら、「場違いでスマンな」とか思ってたり。

 あ、でも3割くらいは男性だったんですよ。しかもカップルではなく、男友達と来てたり、僕みたいに1人で来てた人が結構見られましたね。「クジラの子らは砂上に歌う」はレーベルこそ少女漫画系列とはいえ、展開は全くその辺を感じさせないので、まぁ納得かなと。

 

 待ってる間、携帯電話とかに関する注意事項とかあったんですが、チャクロ役の赤澤燈さんがチャクロになりきってアナウンスしてくれてました。原作知ってる人なら、この時点で原作が大切にされてると気づけたのではないか。

 

 で、開演したわけですが、とりあえずネタバレにならない感想をまず。

 

 

 最高だったわ……。

 

 

 「舞台とかww」みたいな感覚があった僕の脳天をぶち抜くかのごとく、夢のような2時間半だった……。パーフェクツ……パーフェクツ舞台……。

 

 ネタバレが嫌な人用の感想をまず置いておこうと思うで、キャラへの簡単な感想から。あくまで原作消化済みの目線なのでその辺よろしく。あとチョイスは完全に好み。

 

 

・チャクロ

 正直なところ、一番原作とはイメージが違うって印象。ただそれは舞台化する際にキャストを振り当てたことにより生じた変化かな、と。担当の赤澤燈さんは間違いなくイケメンなんだけど、原作チャクロは女の子っぽいから致し方なし。

 それでもきちんとチャクロのキャラクターを理解されているのか、根っこの部分はまさしく「ハイパーグラフィア」を患う泣き虫少年でした。ちょっとやんちゃ成分多めになってるかな?くらいで。言ってみればキャラデザインだけ舞台用にリファインされたチャクロって感じです。

 

・リコス

 ごめん、一番期待してなかった!(暴投

 だって表紙のリコスに一目惚れしたし、クジ砂で一番好きなのもリコスなんだ……!オタクの妄言だとして許して欲しい。

 でも、蓋を開けてみたら完璧にリコスだった。キャラデザイン的にあの雰囲気を出すのは凄く難しいかと思うのですが、その分を演技で補っている感じです。特に声の雰囲気が完璧だった……。彼女は恐らく物語の展開上もっとも内面が変化している人物ですが、その変化をきっちりと押さえていて、「もう分かったよ!俺の負けだよ!」って感じ。一番期待してなかったのは本当だけど、その分一番(良い意味で)裏切られた子でした。ブラボー。

 

・オウニ

 パーフェクツ……! パーフェクツキャスティング・オブ・オウニ……!!

 と謎の賞賛を送りたくなるほどに、完璧なオウニ。もうアニメ化とか映画化あってもコイツがやればいいよ!ってレベル。オウニは男でも惚れ惚れするくらいなイケメンだけど、もう舞台でも佇まいからしてイケメンだったね。そりゃ二ビも惚れるよね(違

 もう全部良かった感じですが、あえて一個上げるなら殺陣かなやっぱ。オウニが暴れまわってる感じハンパなかったです。サイミアの表現については後述。

 

・スオウ

 パーフェクツ……! パーフェクツキャスティング・オブ・スオウ……!!(2回目

 こっちもこっちで、あの雰囲気を出すのは中々に難しかったと思うんですけど、演技でちゃんとスオウだと分かる。なよっとしてる感じの中にちゃんとした芯を感じました。

 

・サミ

 こっちもこっちで良いサミだった(謎

 しかもヒロインポイント盛られてる。

 色々と言いたいことあるけど、この子に関してはほぼネタバレだよ!!

 

・ネリ、エマ

 一番かわいかった(確信

 こっちもネタバレばっかだから後述

 

・ギンシュ

 パーフェクツ……! パーフェクツキャスティング・オブ・ギンシュお姉さま……!!(3回目

 凄かった……。多分原作に比べて出番盛られてるけど、それも納得の魅力。っていうか原作でもリコスの次に好きだよギンシュ。

 こっちも殺陣が良かった。オウニはかっこよさ重視って感じでしたが、ギンシュは何とも爽快感溢れる動きだった。役者の人、ペルソナとかもやっててその辺わきまえているのか、実にツボを抑えた演技でした。あざとい……なんかもう言動の全てがあざとい……!

 

・オルカ

 リコスの兄。恐らく原作でもラスボスなんだろうけど、この舞台ではさらにラスボス感溢れる立ち振舞い。お前はセフィロスか何かかというくらいに色々とやらかしてる。凄い。

 

・ラシャ

 原作読んでても誰だそれって言われそうですが、思い出して欲しい。良く分からないおばあさんがいたはずです。あと7巻的に正体も何となく……って感じですね。

 でもこの人の演技がまた良いんだ。要所要所で出てきた物語を引き締めていく。完全にダークホースだったよね。ビバ、印象に残るババア。

 

 

 ってな感じで、他のキャストの人もほとんど完璧に原作キャラを再現してました。ここまで出来るのかすげぇなぁってしきりに感心していたのである。まだ見てなくてこれから見るけど、ちょっと不安あるかも……という人よ。全く問題ないぞ。保証するぞ。

 

 

 というわけで、ネタバレ感想。まぁ原作知ってたらそうでもないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意。舞台は初めてだったから、自分の日記的意味合いが強い。

 

 

 内容は4巻のヌース・スキロス攻略戦まで。まぁそのへんまでで一区切りまでだよなって思ってたから、この辺は予想通り。基本的には原作通りの進行だけど、やはり舞台なのでいくつか変更点がある。以下、分かった所を列挙。

 

・序盤からギンシュの登場シーンがある。

・オルカが最初の殲滅戦についてきていて、リコスと再会している。あとオウニの正体を一瞬でデモナスと見破っている。見破れるもんなんだろうか。

・オウニの参戦がスオウ救出ではなくチャクロの援護になっている。

・ネリによって与えられるサミを初めとした泥クジラ犠牲者たちとの邂逅シーンが、サミとの対話がメインに変更されている。

・ハクジ以外の長老会はほぼほぼカット。ただしハクジに関してはスオウを守る形で戦死して原作よりも印象深くなっている。

・ヌースの間に関する設定はあるが、説明はほぼ省略。突入戦もほぼまるっとカット。そのせいで二ビまわりもちょっと変更されている。

・まさかのオルカがスキロスに乗船してた。そのおかげでラストバトルの流れがほぼオリジナル。

・オリヴィニスはまるっとカット。

 

 尺の都合でヌース・スキロス攻略戦はかなり駆け足だった印象だが、それまでの描写が非常に丁寧であるため、物足りなさは感じない。またネリやエマの導きのようにかなり抽象的描写が多くなる部分の変更は仕方ないし、それらをサミとの対話に重きを置くなどして上手くカバーしている印象。オリヴィニスまわりはさすがに仕方ない。万が一続編があれば、どうにでもなる部分だし。

 変更点はかなりあったと思うが、どれも原作を上手いこと舞台へ落としこむためにやっていることが伝わってきた。必要と思われるシーンがカットされることはなく、文脈が変わることもない、丁寧な仕事と感じた。

 

以下は特に印象的だった部分。

 

・背景のスクリーン描写

 2.5次元舞台というジャンルになるらしく、そのせいか背面スクリーンに何回かCGが映った。例えば砂葬のシーンで船が飛ぶときにはそういうCGが移り、飛こう(ホタルっぽいアレ。漢字だせねぇ…)現象のあたりもCGが使われてた。泥クジラの住人たちが罪人だと明かされるシーンではスクリーンに文字が映ってたわけだけど、あれはちょっと寒かった気がする。ほぼ唯一の明確なマイナスポイント。

 ちなみにファレナはじめヌースもCGだった。そりゃそうか。

 

・オープニング

 リコス登場後、いきなり主題歌と共に、背景スクリーンにキャストの文字が映る。と同時にキャラクターたちが踊る踊る。「舞台ってOPあるの!?」ってめっちゃ驚いたけど、個人的にはとても良かったと思います。インパクト抜群だったし、何より主題歌最高。曲に合わせて殺陣っぽいことをやったりして、かなりアニメOPに近い作りだったと思うんだけど、これも2.5次元舞台だからなんだろうか。その辺はさすがに分からない。

 

・サイミアガール

 念動力、サイミアの描写はかなり不安だったが、黒子ならぬ白子の少女たち(?)が妖精のように舞うことで上手く表現していた。あの特徴的な紋様は背面スクリーンに映されるだけでなく、白子の人達がもつ白い布に投影される形でサイミア使用者の周りに展開するという立体感を出していた。これに関しては素直に感心。まさに「メディアの違いを理解せよ」をきっちりプロとして昇華していると思う。

 サイミアガールとはキャストの方々がパンフの中でそう呼んでいたんだけど、この人達も殺陣で動く動く。念動力で動かされる棒は全てこの人達が動かすわけだけど、基本的に白いひらひらと共に動き何とも雰囲気が出ている。剣や棒だけだとどうにも舞台じゃ栄えないし分かりづらいのではって思ってたが、サイミアガールによってその辺全て解決してた。一対一であっても、サイミアガールが何人も入り乱れて迫力が凄い。こういうのがプロの発想なんだなぁ、と脱帽します。

 

・サミをはじめとする泥クジラの人々の死

 1巻の終盤で、それまでのほのぼのっぽい雰囲気に急降下爆撃を仕掛けるかのごとく始まる鬱展開があるわけですが、サミとの死別はその最たるもの。1巻でも思ったけど、リコスとダブルヒロインかと思った途端にあの仕打ちはあんまりだよ!!! しかも舞台版サミの元気の良さが強調されてて余計に辛い。辛いよ。

 原作でもそうだったように、死亡シーンが特別引っ張られることはなかった。どうも邦画とかの悪い側面の印象が強いせいか、こういうメディア展開だと死亡するシーンが無駄に強調される気がしていたのだが、この舞台ではそうでもなかった。サミも後のシーンがあるとはいえ、あっけなく死亡。その後も感傷にひたる間もなく敵が来るわ来るわ。良い感じに絶望的で、1人で「こういうのでいいんだよこういうので」と頷いたりしてた。

 脚本とか演出の人が「ちゃんと原作知っててくれてるな」と感じたのは、むしろ死亡した人たちを思い、チャクロやオウニなど生き残り組が絶望しているシーンに尺が取られていたこと。人がいなくなった事についての悲しみは、むしろ後になってじわじわと生き残った人たちを攻め立てるんだなって実感する。クジ砂が「生きる」ことをテーマにしている言われるのも、むしろ残された人々がこれからどうするかをこうして鮮明に描いているからだろう。「蒼穹のファフナー」でも思ったけど、残された人のこういう苦しみを描写するのはだいたい名作。今回の舞台はその辺ちゃんとわかってる。最高。

 ちなみにチャクロたちがあまりに悲惨な現実に絶望しているシーンでは、会場の色んな所から鼻をすする音が聞こえて、「俺は意地でもそんな弱みを見せるものか」と謎の意地をはり非常に辛い戦いをしていました。普通に泣いておけばよかった。

 その後にチャクロが立ち直るため、ネリがサミの思念か何かと合わせてくれるシーンがあるわけだが、その辺はサミのヒロインポイント急上昇してた。原作では他の住人たちとかリコスも出てきてたしな。それが舞台の上ではサミの独壇場ってすんぽーよ。キスシーンカットだったけど、これ原作読み直さないと気づかなかったくらいだしへーきへーき(多分)。代わりにサミが「リコス可愛いけど浮気しちゃダメだぞ?」って言ってた。チャクロ、お前その後すぐにリコスとイチャつくんじゃありません!!

 てかスキロス攻略戦の時の二ビ似たようなシーンあったけど……もしかして二ビもヒロインか?

 

・エマとラシャ

 ネリはひたすらに可愛かったけど、エマは何ともいえない雰囲気で良し。でもネリのが好きなんだよ!!

 というのは置いておくとして、エマは原作でもそうだけど、非常に謎めいた感じ。その超越した雰囲気が非常に物語に緊迫感を与えている。「さぁ、来るわよ!」ってエマが言った途端にスキロスとの最終戦に入ったあたりは震えた。

 ラシャもエマほどではないが、何か他とは違う視点を持っていて、エマと同じく謎の老婆。何度も語りを入れているのも同じ。この2人が終盤、殺陣の中で色々な事を語るシーンが数回あったと思うが、その時の表現が結構好き。色々な人々が縦横無尽に入り乱れて戦っているのが、突如としてスローとなり、その中をエマやラシャが泥クジラについて語りながら歩いたり踊ったりしていく。単に殺陣ばっかだと見ている方も疲れるし、こういう間のとり方があるんだって勉強になる。

 そういう意味では、ラシャの存在感が異様に大きくなっていた舞台版。7巻の内容的にラシャにはこれからスポットライト当たるっぽいから、その辺を踏襲しているのだろうか。

 あと、くるくる回るエマが可愛かった。いやマジで。

 

・殺陣

 クジラの子らは砂上に歌う、意外と戦闘シーンが多かったりする。特に4巻までの内容はマジで戦争状態。必然的に殺陣のシーンが多くなるし、わりと大変だった的なことはパンフレットのキャストコメントでも言ってる。実際、振り返ってみれば半分くらいは殺陣だったんじゃなかってくらいに多い。ぶっちゃけキャストの人、途中でへばってませんでした?ってくらい多かった。すげぇな、稽古大変だったろうな……。

 サイミアガールもいるせいもあって、十人以上が舞台上を入り乱れる乱戦が多いこと多いこと。どこに目を向ければいいんだこれ!ってわくわくしてた。スキロス攻略戦開始あたりは特にそう。

 その他で印象に残った殺陣は、ファレナの殺害を止める時のオウニVS団長かな。サイミアガールの演出が恐ろしく光っていた。乱れ飛ぶ剣がサイミアでコントロールされてる風景が良く描写されてて、一対一なのに迫力あったよ。あと最後のヌースの間での、チャクロ・リコスVSアラフニ。まさにラストバトルって感じ。サミにヒロインポイントを譲ってたリコスもここに来てまるでボーイミーツガールのヒロインのように活躍する。実際にヒロインだけども。あと原作と違って、意外とチャクロが戦う。アラフニに相手にもリコスのフォローとかしてたし。強いな赤澤燈版チャクロ。

 

・音楽

 これも凄く良かった。というかこの舞台の成功には音楽担当が超優秀だったおかげもあるのではないかと思うのですが、どうですか舞台に詳しい人。

 目立った所では主題歌。最初に流れた時から「めっちゃ原作の雰囲気に合わせてきたな……」って感動してた。他にもいい曲一杯あったはずだし、EDとか挿入歌も良かったはずなのに、主題歌が強すぎる。これ書いてる時も何十回もリピートしてるよ。パーフェクツ……! パーフェクツソング・オブ・クジラの子らは砂上に歌う……!! あ、でもちゃんとサントラも出してくれよミステリーボニータさんよぉ。

 主題歌といえば、盛り上がるシーンでの挿入歌としても使われてた。こういうのもアニメっぽい演出だと思うんだけど、実際はどうなのだろうか。

 殺陣の時が目立ってたけど、効果音とか環境音もいい仕事してた。色んな音が使われてたし、BGMの強弱も演出としてしっかり使われてる。前述のエマやラシャが語るシーンでは特に気を使ってたと思う。どうしても舞台では表現しにくい泥クジラの様子も、風の音などの環境音がいい仕事してたおかげで、少なくとも原作知ってる人は十分背景を思い描けたのではないか。

 

・光の使い方

 これは舞台の基本なのかもしれないけれど、初心者としてはこれだけでも楽しかった。スポットライトの当て方はもちろん、舞台を照らす照明灯が一気に赤色へ変化したりするだけでも、雰囲気が驚くほど変わる。またスロー描写の時に深い青を落としたりするのも、視覚効果として強力なんだなと学んだ。

 あと飛こう現象の時のCGにも観客席に光を当てるとかしてたと思う。あそこ、なんか妙に3D感あったしな。

 

 

 ……こんなもんかな。思い出したら書き足しておこう。

 

 あとあるとしたら、モブとか含めてめちゃめちゃ人数が多かったことなんだけど、他の舞台もこんなもんなんかしら。そのおかげで舞台上一杯に人が溢れて同時に動いて、映画とかアニメじゃ味わえない生活感あったけど。

 舞台上に人が溢れることの利点というか、舞台ならではの演出だなって思ったのは、舞台の端と端を上手く使うことで、「同時」の描写を出来ることかな。監禁されているリコスが右にいて、それを助けようとしているチャクロたちって見せ方は、やっぱ舞台の上ならではの表現方法だもんな。あと最後のオルカみたいに、舞台袖からこっそり出てきていきなり銃ぶっ放すとかも、舞台だからこそって感じだし。そういう意味でも舞台ならでの演出をたくさん見られて楽しかった。

 

 長い。いやそんだけ楽しかったということで。

 でも一回じゃ色々と見足りないよ!! リピーターチケットも売ってたけど、地方民の遠征費用考えてくだち!!

 

 というわけで、世界の片隅からじわじわとミステリーボニータへDVDを出すように圧をかけていきたいと思います。皆さんも面白いと思ったならDVD発売を祈って圧をかけましょう。

 

追記。

DVD出るよ!やったね!